Pixiv執筆応援プロジェクト~私だけが知っている~
に応募した作品です。
ここ最近、夜も蒸し暑くてイヤになっちゃう。せっかくメイク気合いいれたのに。
早く帰りたい……。電車まだかな~。
気持ちを静めるために、推しの新曲を聴きながら、今日あったことを最初から思い出してみる。
となりのクラスの男のとデートをした。
顔はそんなに格好良くないけど、頭が良くて、私なんかとは全然住む世界が違うんだろうな~って感じの人。全然話をしたことがなかったから、先週いきなりデートしようって言われたときにはびっくりしちゃった。
男の子と遊びに行くことは何回かあったけど、あらたまってデートに誘われるのは初めてだったから、めちゃくちゃ服悩んだし、髪も何回もセットし直して、でも全然決まらなくて中途半端になっちゃった。
ショッピングモールとカラオケと、話題になってたカフェと……一日でいろんなところに行った。結構ブランド好きなんだなとか、インディーズバンド詳しいんだなとか、ヤバイなって思った。何がって言われるとよくわかんないけど。
人はみかけによらないってこういうことなんだなって思った!
ていうか、デートって言うからもっと手つないだり、キスしたりいろいろするのかと思ってたけど、特に何もなくてちょっと寂しいかも……
と友達にメッセージを送りかけて、文章を全部消した。
今日一日振り返ってみて、確かに彼に対して驚くことが山ほどあった。
でも「ヤバい」なんて少しも思わなかった。
好きなものはどれも彼に合っていたし、頭の悪い私にもわかりやすく説明してくれて、うまく決まらなかった髪型だって、「可愛い」って褒めてくれた。
これだけで百点満点のデートだ。
それだけでなく、「変なことは絶対にしない」って言ってくれた。
他の子はつまんないと思うかもしれないけど、人見知りな私にとってはすごく嬉しかった。
たぶん本当はいろんなことしたかったんだろうな。
私が近づくたびに目が泳いでたし。それを我慢してずっと一日いてくれたなんて……こんなに幸せな日があっていいのかな?
思い出せば出すほど、彼のことをどんどん好きになっている自分がいる。
デートはおろか、恋をしたのも私が初めてなんだって!
一人で騒ぎそうになるのを必死でこらえる。
友達にこんなこと言ったらなんて言われるかな?
みんな優しいから、前向きな言葉をかけてくれるかもしれない。
友達とのメッセージ画面をもう一度開いて、また閉じた。
今はもう少しこの幸せな気分に浸っていよう。